One Day~君を見つけたその後は~
もちろん、この部屋にはお酒なんて一滴も持ち込まれていない。

そこのところは滝田先生が徹底していて。
バスに乗る前には、先生自ら目を光らせて持ち物検査を行ったくらいだ。


『お前達に酒なんか飲まれて、それを学校に通報でもされたら困るからな。頼むから静かに退職させてくれ』

ひとつひとつ、楽器ケースの中身まで確認しながら、真顔でそんなことを言う滝田先生って……。


だけどそのおかげで、この大部屋では健全すぎるくらい健全な座談会が繰り広げられていた。


でも、中にはいるんだよね。

お酒なしでも、場の雰囲気だけで酔える人って。

うちのパパなんて、お酒好きな陽人の両親にしょっちゅう言われてるもん。

『高橋くんは安上がりでいいなぁ!』って。


そんな“似非酔っ払い”のタケちゃんは、さらに力説を続けた。

「だーかーらー! 俺には、恭太郎さんと慎先輩、どっちか一人だけなんて選べないですよー」


……ん? 
タケちゃん、一体何の話してるの?

突っ込みどころはいろいろあるんだけど、まずはこれ?


「えーと……『恭太郎さん』って、誰のことかなー?」


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