One Day~君を見つけたその後は~
いや。
分かっているんだけどね。

「やだなぁ、山野上先輩に決まってるじゃないですか!」

そんなこと、分かってるんだけどね。
念のために確認しておきたかっただけなんだけどね。


……うん。やっぱり、ヤマタロのことなんだよね。


「だって、慎先輩のことだけ名前で呼ぶのって、不公平だと思いません?」

眉毛をハの字にして「ああ、辛いなぁ」なんてわざとらしいため息をつくタケちゃんは、頬をほんのりピンク色に染めちゃって、まるで恋する女の子みたい。 

私の意見を聞こうともせず、ひたすら二人のいいところを挙げては、あっちがいいとか、やっぱりこっちがいいとか……。

……ますます、意味がわかんない。


真面目に聞いているのがバカらしくなって、私は、目の前に散乱したお菓子の袋を小さくたたんだり、空いた紙コップや紙皿を重ねてテーブルの端に寄せてみたり。

タケちゃんの話に「はいはい、そうだよねー」なんて適当な相づちをうちながら、そんな動作を繰り返していた。


すると、私の反応が悪いのが気に入らなかったのか、タケちゃんがいきなり話題を変えた。


「そういえば、深月先輩はどうして恭太郎さんのこと、名前で呼ばないんですか?」

「……べっ、別にいいじゃん!」

この酔っ払いは、また余計なことを聞いてきて……


「よくないですよ-、彼氏なのに。どうして呼んであげないんですかー?」

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