One Day~君を見つけたその後は~
──それからほんの数分後。

陽人に部屋を追い出された私とヤマタロは、マンションのエレベータホールにいた。

エレベータは珍しく1階で止まったままで、すぐに上がってくる気配はない。


「もーう、どうするのよ! 陽人、怒っちゃったじゃん!」


……あの直後。

陽人は、湯気の立つホットコーヒーの入ったマグカップだけは部屋入り口のカラーボックスの上に置いてから、お盆を放り投げてくれた。

そんな、最低限の理性を保ってくれたことには感謝している。

だけど。

私の隣にいたヤマタロは、お盆が宙を舞った瞬間、信じられない反射神経をみせて起き上がり、自分だけ難を逃れた。

そして。

その場に取り残された私の顔面には、見事お盆が直撃。

私は一人で、全身にポテチ(しかも私が大好きな、プリングルズのサワークリーム&オニオン味!)を浴びる羽目になってしまった。

……私、こんな目にあうためにお気に入りのお菓子を持ってきたわけじゃないんだけど。


私は、頭のポテチ粉を手で払いながらヤマタロに言った。

「今日のこと、絶対チョコにも伝わっちゃうんだからね。もーう、恥ずかしい!」

ヤマタロは私に背を向けて、じっとエレベータの着床表示灯を見つめている。

「ちょっとヤマタロ、聞いてるの?」

ヤマタロがゆっくりとこっちを向いた。

「……聞いてるよ」


その顔は、まだ不機嫌そうだった。
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