One Day~君を見つけたその後は~
繋いでいた手が離れたのは、ヤマタロが部屋のドアを開けたとき。

もう片方の手は私のカバンを持ってくれているから仕方ないんだけど、それでもやっぱり寂しいって思ってしまう。


「どうぞ」

そう促されて、私は先にヤマタロの部屋に入った。

ヤマタロは決して几帳面ってわけじゃないから、部屋には無造作に服や雑誌が投げ出されていた。

それでも、いつも足の踏み場がないくらい散らかっている陽人の部屋を見慣れているせいで、かなり綺麗に見えてしまう。

ここだけの話、間違いなく私の部屋より片付いてるし……。


だけど机の上はすっきり片付いていて、置かれているのはお財布と定期入れと、閉じられたままのノートパソコンだけだった。

勉強してたわけじゃないんだ。
私が来るまで、本当に寝ていたのかも。


「何ジロジロ見まわしてんの? 何度も入ったことあるのに」

後から入ってきたヤマタロが、部屋の真ん中に突っ立っている私の後ろを通って、ベッドに座る。

私は、目でそれを追いかけながら呟いた。

「それはそうなんだけど……」


……なんとなく落ち着かないんだもん。

だって、今、家にふたりっきり。
意識しないようにしようと思えば思うほど、緊張しちゃうんだよ……。


「深月」

ヤマタロが私の名前を呼びながら、ベッドの、自分の横の空いてるスペースをポンポンって叩く。

これはヤマタロが良くやる仕草で、“こっちに来い”っていう意味。
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