One Day~君を見つけたその後は~
1.午前九時(塾・チョコ)
眠い。
……眠い。
…………眠いー!
私──皆本蝶子は、持っていた生物のテキストで口元を隠すと、ひとつ大きなあくびをした。
朝からこれで何度目だろう?
あくびをすると、涙だけじゃなくて何故か鼻水まで出ちゃうからかっこ悪い。
私はスンと鼻をすすった。
私が今いるのは学習塾。
教室のシンプルな壁時計に目をやると、それはもうすぐ九時を指すところだった。
いち、に、さん……。
あーあ。
陽人とのデートまで、あと四時間もあるんだ。
ここ最近、年度末試験や進路相談に陽人の部活等、何かと慌しく過ごしていた私たちにとって、今日は待ちに待った久々のデート!
……だというのに。
昨日の夜、私は塾の予習そっちのけで、「明日はどこに行こうかな」って、新色のマニキュアを塗りながら楽しいデートに思いを馳せていた。
そんな時、かかってきたのは陽人からの電話。
だけど、大好きな恋人との会話は、想像していたような甘く楽しいものにはならなかった。
……全く、あの馬鹿カップル、人の部屋で何やってんだか!