One Day~君を見つけたその後は~
「え?」

え?

え??

もしかして、あれで終わったわけじゃなかったの?

「お前、さっき『両方欲しい』って言ったよな? だから、お望み通りに」

「……といいますと?」

うわぁ。なんだかとっても、いやな予感が。

「大サービスして、両方やる、ってことだよ」

ああ……やっぱりそういうこと……。

「だけどオレが先だから。そこは譲らないからな。終わるまで、昼メシはお預け」

終わるって、何が?

……とは、さすがに聞けないし!

急に恥ずかしさがこみ上げてきて、私は、もう一度枕で自分の顔を隠した。

「タイムリミットは、オレが帰るまで。今度こそ、覚悟決めとけよ?」

枕に顔をうずめたまま、黙って小さく頷く私。

……って!
私、どうして素直に頷いちゃってるの?

もしかして、これが“流される”ってこと!?

「じゃあ……」

ヤマタロの手が、すっと私の頭から離れていく。

そして、

「カウントダウン、スタート」

そう言い残すと、ヤマタロはこっちを振り返りもせずに、部屋を出て行った。



……トン、トントンって階段を駆け下りる足音が聞こえてくる。

それは予想以上に軽やかで、あっというまに玄関にたどり着いたと思ったら、すぐにドアを開ける音がした。

早いなぁ。
もう靴を履いて、外に出たんだ。


……って、ちょっと待ってー!


慌てて飛び起きて窓から外をのぞくと、ヤマタロが、ちょうど家の真下をコンビニに向かって走っていくところだった。

もしかして、そのままお店まで走っていくつもり!?


いやいや、おかしいって。
話がちがうよ。

ゆっくり行ってくるから、休んでろって言ってくれたのに。

これじゃすぐ帰ってくるじゃん。

休む時間も、心の準備をする時間も、ないじゃないのー!
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