One Day~君を見つけたその後は~
「受験勉強を優先してもいいっていうのが、復帰の条件だったからね」


深月に聞いたところによると、慎くんの復帰には、滝田先生が一枚噛んでいたらしい。

担任教師としてはどう考えても頼りない滝田先生だけど、深月たち吹奏楽部の部員にとっては尊敬してやまない顧問らしくて。

そんな滝田先生に懇願されてさすがの慎くんも断りきれなかった、というのが事の真相だった。


それは深月と別れて三ヶ月近くが過ぎた三月上旬のこと。
時期的にも、気持ちの整理がついてちょうど良かったのかもしれない。


だけど、ね。

慎くんを熱心に口説いておきながら、自分は長年の夢だった音楽の道に専念する為に教師を辞めてしまうんだから、滝田先生もいい加減なものだ。

まあ、先生らしいって言ってしまえばそれまでなんだけど。


「なんだかチョコちゃん、俺が深月と別れてから急に冷たくなったよね?」

……慎くん、なかなか賢いじゃん。

だけどさすがに『その通りだよ!』とは言いにくくて。
私は言葉を濁した。

「そう? 共通の話題がなくなったからじゃない?」


……正確に言うと、私の中で慎くんの株が下がったのは、深月と別れてからじゃなくて後輩のエリナと浮気してからなんだよね。

だいたい、あんなブリッコ(死語?)のどこがよかったんだ? って話。

まあ……友達の欲目で見ても、確かにエリナの方が美人だとは思うけど、でも深月の方が愛嬌があってかわいいじゃん!

そもそもエリナなんて名前からしてこじゃれてて気に食わないって言うの!
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