One Day~君を見つけたその後は~
「ねえ、慎くん。一度聞きたかったんだけど」

「何?」

「……あの時、どうしてエリナと浮気したの?」

そこでようやく、慎くんは問題集をめくる手を止めて私を見た。



慎くんは、私の意地悪な質問に驚くわけでも困惑するわけでもなく、

「……今更、すごいこと聞くね」

って、ただ呆れた顔をしていて。


「いいじゃん、一度聞きたかったんだから。何か問題ある?」

「いや、いいけど。……でも、別に理由なんてないよ。浮気ってそんなもんじゃない? っていうか、一度キスしただけなんだけど、それでも浮気なんだ?」

「当たり前でしょ。他の女に下心見せた時点で浮気だよ!」


アレを浮気じゃないと思ってるなんて信じられない。

要は気持ちの問題なんだから、最後までしなきゃ浮気じゃないなんて、そんな都合のいい話があるもんかっ!


……と力説してやりたいところだけど、今ここで慎くんと「どこからが浮気でどこまでが浮気じゃないのか」なんて不毛な議論をするつもりはない。


私は慎くんの返事を促すように、更に質問を続けた。


「だいたい、深月が嫌な思いをするかも知れないって思わなかったわけ?」


すると、慎くんは前に向き直ってしばらく宙を見つめた後、
「うーん」
って唸った。


そして、私に意地悪そうに聞いてきた。


「例えばチョコちゃんだったらどう? 相馬が浮気したらどうする?」

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