One Day~君を見つけたその後は~
あーあ、軽い自己嫌悪。
自分から聞いておいて何なんだけど、聞かなきゃよかったよ……。


慎くんと深月がケンカして気まずくなった後、私は完全に静観を決め込んでいた。

ウジウジ悩む深月を見ているとじれったくて、何度も口を出したくなったけれど、でも二人の問題だからってぐっと我慢して。

……だけど、あそこで無理矢理でも脅してでも二人に話をさせていたら、二人は別れずにすんだのかな?


でも、そうしたら、ヤマタロはどうしてたんだろう?

だってアイツ、かなり深月のこと……


「それで、最近どう? 深月は山野上とうまくいってるの?」

「えっ!?」


まるで私の考えていることが聞こえたみたいに、慎くんから発せられたヤマタロの名前。

私は動揺を隠せなくて、慎くんと目が合わせられなくて、机の上のテキストに視線を落とした。

……なんか私、悪いことしてるみたいだ。


「うん……仲良くやってるよ」

「そうか。それはよかった……」


慎くんの声は、とっても穏やかで、他意は全く感じられなかった。


「ねぇ、それって本心?」

「もちろん本心だよ。深月は幸せそうに笑ってる顔が一番可愛いからね。……分かる? 頬緩めて『へへー』って笑うちょっとマヌケな顔」

慎くんは思い出し笑いをしながらそう言った。


うわー。
もう、ヤバい!

もうこれ以上は無理だよ、こんな話を心の中にとどめておかないといけないなんて、私には重過ぎるっ!!


だけど幸いなことに、その会話を最後に、慎くんは再び英語の問題集とにらめっこを始めてくれて。

私はものすごい疲労感に襲われてしまった。

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