One Day~君を見つけたその後は~
そして間もなく、教室に予鈴が鳴り響いた。
静まりかえった教室を見渡すと、みんなテスト前の最終確認に余念がない。
私は、一夜漬けやテスト直前の詰め込みっていうのがどうしても出来ないタイプだ。
だから、決して余裕があるわけではないんだけど、直前に頑張るっていうことが出来なくて。
それが余裕あるように見られるみたいで、よく周囲に誤解されてしまう。
あーあ。
こんな息苦しい空間で、他人に押し付けられて勉強するよりも、深月たちと勉強するほうが私には合ってるんだけどな。
私は生物のテキストを机の中にしまいながら、
『ねえねえ、チョコ! “肺胞”って、カタカナでフリガナふったらかわいいよねー』
って楽しそうに笑う深月の顔を思い出していた。
そう言って少し得意げに私に見せてくれた教科書の“肺胞”っていう単語の上には、深月の字で“ハイホー”って書き加えられていて。
それ見て、二人で思いっきり笑ったんだよね。
……最近、深月はよく笑う。
ううん。笑うだけじゃなくて、怒ったり、困ったり。
そして嬉しいことに、泣き顔だって、隠すことなく見せてくれるようになった。
まぁ……だいたい泣く理由はヤマタロ絡みなんだけど。
だから、ね。
慎くんには本当に申し訳ないけれど、深月にとってはこれでよかったんじゃないかなって思うんだ。