One Day~君を見つけたその後は~
仕方なく私や陽人が間に入って、落ち込む深月を慰めるんだけど、それでも深月は立ち直れなくて。

そんな深月を最終的にフォローするのは、やっぱりヤマタロだ。


「そんなに心配なら、オレの顔に自分の名前でも書いとけば?」

「えっ、書いていいの!?」

「いいけど、やったらやり返すぞ」

「うわー、それはイヤ! 恥ずかしすぎる!」

「……どういう意味だよ」


そんな、聞いてるほうが全身ムズ痒くなる会話をしているうちに、気がつけば深月は機嫌を直してしまう。

それはもう、私や陽人の努力は一体何だったんだ? ってくらい簡単に。


あーもう、どれだけ馬鹿カップルなんだよ、お前らっ!



──そんな感じで、深月のほうが必死そうに見えてしまうあの二人。


だけど、私は知っているんだ。

ううん。
私だけが、知ってるんだ。

本当は、ヤマタロのほうが、深月に夢中だってこと。



『オレの覚悟は、そんな軽いもんじゃねーから』



そう言って私のことを睨みつけたヤマタロの顔を、今でも覚えている。


あの時、私は思ったんだ。

こいつ、半端なく深月にほれてるって。

だから、こいつになら、黙って深月を任せられるって。


……そう。

あれは、私が深月より先に“オレ”の正体に気がついた日。

その真意を聞くために、ヤマタロを呼び出したときのことだった……

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