One Day~君を見つけたその後は~
エリナは明らかに陽人だけに向かって、こう話しかけた。

「先輩、種目は何ですかー?」

「短距離」

「あっ、イメージぴったり! 先輩って走るの速そうですよね! わぁー、月曜日が楽しみですーっ」


……オレのことは完全無視か。

別に、そっちのほうがやりやすいからいいけど。


エリナの熱烈なプッシュを受けた陽人はというと、頭の中はチョコのことでいっぱいで心ここにあらずで、

「はぁ……」

そんな、適当な返事を返すだけだった。

まぁ、この女にはこのくらいの対応がちょうどいいだろう。
その調子だ、陽人。


だけど、エリナは負けなかった。


「先輩、百メートルのタイムどれくらいですかー? エリナは運動が苦手で、二十秒以上かかっちゃうんですよー」

「はぁ? 遅すぎるだろ」

「やっぱり遅いですか? イヤだっ、恥ずかしい!」

「アホか、自分から勝手に言っといて恥ずかしいはないだろ。イヤならお前も走れば?」


あーあ……。

気付けば陽人はエリナの話にのっかっていて。


チョコと深月以外の女にはほとんど免疫のない陽人は、エリナに話しかけられてまんざらでもないようだ。

隣で見ていても分かるくらい、鼻の下が伸びている。



チョコにこの顔、見せてやりたいな。


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