One Day~君を見つけたその後は~
迂闊だった。
隣に男……と聞いて、思わず体が反応してしまった。


もし振り返って、深月のそばに慎の姿を見つけでもしたら、間違いなくオレは冷静に笑ってなんていられないだろう。

それを陽人にからかわれるのはまっぴらだった。

だから、アイツの方を見るつもりなんて無かったのに。


……なんか、オレ、かっこ悪いよなぁ。



見なくても、体には相変わらず深月とタケの熱い視線を感じる。

オレは頭をかいた。


……全く。

なにが「いい子にしてたらご褒美をやる」だ。
ご褒美なんてこっちが欲しいぐらいだっていうのに。

いつだって先に、一人でいっぱいいっぱいになりやがって。

オレだって、全然余裕なんて無いっつーの。



「陽人、別の出口から帰るぞ!」

オレはくるりと向きを変え、バスに背中を向けた。


「お前、面白いくらいイラついてるよなー」

「うるせー。お前は自分の心配でもしてろ!」


オレは陽人の手から携帯を奪い取った。

ずっと握られっぱなしの携帯は、生温かくて気持ち悪い。

オレは、それを開くと、わざと陽人の目の前に突きつけてやった。


「あぁ……そうだったな……」


急に現実に引き戻されて、携帯を受け取った陽人から一気に笑顔が消える。

……まるで死刑判決を待つ被告人のような顔をしやがって。


だけどすぐに陽人は覚悟を決めたらしく、「よし」と小さく唸って携帯を開いた。



そしてその後すぐに、


「ぅおぉぉぉーっ!」


そんな、歓喜の叫び声を上げた。

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