One Day~君を見つけたその後は~
叫びというより、雄たけびだな。
どこか人間離れしているし。

それにしてもこんな至近距離で大声で叫ばれたら、耳が痛くてかなわない。


「ヤマタロ! ちょっとこのメール見てみろよ!」

「……いいよ別に」

「まあまあ、そう言うなって、ほら!」


陽人のその嬉しそうな反応を見ていれば、メールの内容は見なくとも分かる。

それなのに陽人は、自分の携帯を無理矢理オレに押し付けようとするもんだからたまったもんじゃない。

他人のメールなんて、興味ないって……。


「ほら、見てみろよ。チョコも可愛いこと書いてくれるよなー」


オレは陽人のあまりのしつこさに負けて、仕方なしに携帯の画面を覗いた。


〈昨日は言い過ぎてゴメンなさい。でも、それだけ今日のデートを楽しみにしていたんだよ。寂しかった気持ち、分かってね。えーん、早く勉強なんて終わらせて陽人に会いたいよーっ!〉


その文中には顔文字やらハートや星の絵文字やらがいくつもちりばめられていて。

……なんだか長いこと見ていると目が痛くなりそうだ。

それにしても意外だな。
チョコって、こんなメールを送るヤツだったんだ……。

まだ深月のほうが落ち着いているじゃないか。



「こんなことならもっと早くメール見とけばよかったよ。……ヤマタロ、ちょっと待ってくれ! チョコに電話するから」


そう言うと、陽人はオレの返事を待たずに、チョコに電話をかけはじめた。



……オレ、もう用無しだろ?

先に帰っちゃいけないのか?


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