One Day~君を見つけたその後は~
すると。

「こらぁーっ!」

チョコは身を乗り出すと、手を伸ばして、俺の口から離れたばかりのストローをがしっと掴んだ。


「……え?」

「あーあ、残念。ちょっと遅かった……」


なんだなんだ?

俺は、悔しそうにテーブルを見つめるチョコの顔を覗き込んだ。

「チョコ、いきなりどうした?」

すると、チョコは口を尖らせて、

「もう、『どうした?』じゃないでしょー。陽人、ストローはちゃんと手で持って飲まないと、行儀が悪いよ? ほら見て、テーブルにコーヒーが飛び散ってるし!」


確かに。

先が折れ曲がるタイプのそのストローは、俺の口から離れるたびに、その先端を下に向けて左右に揺れ動いた。

そして、その動きに合わせて、ストローの中に残っていたアイスコーヒーの滴がテーブルに飛び散って。


──ああ、そうだったな。

あれは先月のことだったか?

俺は、以前も同じことをやらかしてチョコに散々怒られたのを思い出した。


「……悪い」

「本当に悪いと思ってる? もうこれ三度目だよ?」

「俺、そんなに何度も言われたかな?」

「言ったよー、もしかして覚えてないの?」 


さっきチョコの熱い視線を感じたのには、こんな理由があったとは。

それに気付かず、俺は何を一人で緊張してたんだ。
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