One Day~君を見つけたその後は~
「何回言ったらわかるのよ、もーう。子供じゃないんだから……」

チョコはそんなことをブツブツ呟きながら、テーブルに飛び散ったコーヒーの滴を紙ナフキンでせっせと拭き始めた。


俺は、そんなチョコの目の前で、体を小さく丸めて反省するしかなかった。


チョコは世話好きだ。
とにかく面倒見がいい。

これでやかましくなければ文句なしなんだけどな……。


俺は思わず呟いてしまった。

「チョコは絶対口うるさい嫁さんになるよなぁ……」

「ん? 今なんて言った?」

チョコは手の動きを止めると、大きな瞳を更に丸くして俺を見つめた。


あぁ。
やっぱり、こういう気の強そうな表情もいいんだよな……。


だけどここでチョコにニヤけ顔を見せたら、また怒られてしまう。

「いや……」

俺は、精一杯真面目な顔を作って、こう答えた。

「ただの一人言だ」



──マズイ。

チョコのペースに巻き込まれて、今日の目的を忘れてしまうところだった。


俺は立ち上がると、チョコのカバンを手に取った。

「チョコ、そろそろ出よう」

いつものことだが、塾帰りのチョコのカバンはずっしりと重い。

チョコはいつも、こんな重い荷物を持って歩いているんだな。



俺の彼女は、かなりたくましい……。


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