One Day~君を見つけたその後は~
だから、たまにお互い予定のない平日は、学校周辺をブラブラするか、俺がチョコの家までいくかのどちらかだ。


──だけど俺は、何度行ってもチョコの家が苦手だ。


チョコは見た目だけではない。正真正銘のお嬢様だ。

初めてチョコの家に遊びに行ったときは、そのデカさに愕然とした。


俺の身長よりずっと高い壁に囲まれた、要塞の入り口と呼ぶにふさわしい大きな門をくぐると、その先にはまるで学校のグラウンドか? と突っ込みたくなるくらい広くて、だけどきちんと手入れのされている庭が広がっている。

そしてそんな庭を抜けたその先にあるのは、チョコ曰く「古いだけ」の家だ。

いや、「家」じゃないな。
そんな軽いもんじゃない。

だけど「豪邸」でもない。
歴史とか格調とか……何て言うんだ? よく分からないが、オーラが違うんだ。

……そうだ。

それはまさに、「お屋敷」なんだ!


そして情けない話だけれど、根っからの庶民の俺は、この威圧感たっぷりの屋敷を目の前にしただけで息苦しさを感じてしまうんだ。


だから、チョコがまるで異世界にあるこの屋敷の重そうなドアを開けて、

「ただいまーっ!」

と言う声を玄関に響かせると、


「お帰りなさい、お嬢様」


なーんて、クラシック音楽をBGMに、どこからともなく今どきはやりのナントカ言う使用人が出てきてもおかしくない状況なんだが……

今のところ、そんなヤツに出くわしたことは一度も無いので、ホッとしている。

……そこで何故俺がホッとしないといけないのか、よく分からないんだけどな。

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