One Day~君を見つけたその後は~
その代わりにいつも俺たちを迎えてくれるのは、チョコそっくりのお母さんだ。

「陽人くんいらっしゃい、久しぶりねー」

チョコの飾らない笑顔は、間違いなくこのお母さん譲りだな……。

緊張のあまりぎこちない会釈を返しながら、俺はいつもそう思う。



チョコの親父さんは、ここらでは有数の総合病院の院長だ。

院長は世襲制らしく、親父さんが三代目になるらしい。


そして、チョコにはひとり、跡継ぎと期待された五つ年上のお兄さんがいた。

……いや、過去形はまずいな。今でもいることはいるんだから。

だけどそのお兄さんは、高校在学中に早々と「リタイア宣言」をして渡米してしまったらしい。

今では西海岸で役者を目指して頑張っているということだが……俺はまだ、一度もそんなお兄さんに会ったことがない。



そんなチョコが、最近になって急に化学や生物の勉強を始めた。

いままではむしろ苦手だ、嫌いだと言って避け続けていたのに。



もともと成績のいいチョコが、四六時中化学の参考書を開いてブツブツ言っているんだ。

その理由なんて、他に考えようがないだろう。



──チョコ、やっぱり親父さんの跡を継ぐ気になったのか?


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