One Day~君を見つけたその後は~
俺は携帯電話を耳から離すと、遙か遠くに見える豆チョコに向かって、

「チョコ、誕生日おめでとう!」

と叫んだ。

そこで時間を確認すると、チョコが生まれた時間ピッタリだった。



そんな俺の姿を見たチョコは、感動のあまり言葉を失って、涙ぐんでくれた……と思ったんだが。

……甘かったな。

実際のところ、チョコにそんな感動的な反応は見られなかった。

その代わり、遠目からでもよく分かるくらい大きく両手を叩き、それはもう激しく喜んでくれていた。


「もーう、陽人ってば、サイコー!」


そう言ったかと思うと携帯は切れ、間もなく笑いながらチョコが家から飛び出してくる。


「今日、合同練習だったんでしょー? その格好でココまで来たの? 電車に乗って?」

俺はそんなチョコの質問攻めにいちいち首を縦に振りながら、言った。

「仕方ないだろ、着替えてたら間に合いそうになかったんだから」


さすがに日付の変わる深夜にこんなことをするのは無理だけど、この時間帯なら大丈夫だ。
俺は、どうしても直接チョコに「おめでとう」の言葉を伝えたかったんだ。


「おめでとう、チョコ」


照れ隠しに、俺はもう一度そう言った。

そして、そんなゼッケン付のジャージ姿の俺を見て、チョコはまだクスクス笑っていた。

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