One Day~君を見つけたその後は~
ヤマタロにそう言われて、俺はもう一度チョコに視線を戻した。


ちょうどその時だ。


じっと深月の首元で光るネックレスを見つめていたチョコの唇が、小さく『いいなぁ』と動いた……ような気がしたんだ。


「ほーら。今の、気付いたか?」


ヤマタロの問いに、俺は黙って頷いた。


「……体を張るのもいいと思うけど、付き合って二年近く経つわけだし、何か形にしてやってもいいんじゃねーの?」

「でも、俺、金ねーし……」

「そんな高いモノじゃなくていいんだよ、チョコはそんなことで文句を言うヤツじゃないだろ?」

「それはそうだけど……」


だけど……な。

そうはいっても、チョコに安物は似合わないだろ?

イヤ、違うな。俺がイヤなだけなんだ。

チョコに指輪やネックレスをプレゼントするんだったら、それなりのものを送ってやりたい。

間違ってもチョコに首輪なんて、ありえないんだ──。


「まだ三ヶ月あるんだから、今から準備すれば間に合うだろ?」

ヤマタロに肩を叩かれて、俺はぐっと自分の拳を握りしめた。

「ああ、そうだな……」



大体の相場については、ヤマタロに教わった。

そうして最低ラインとなる目標金額を決めると、俺はそれから三ヶ月間、無駄な出費を抑え、小遣いをかき集め、足りない分は親に前借りまでして。


今、俺の財布には、チョコにそれ相応の指輪を贈れるだけの金額が入っていた。


──よし、これでなんとかなるだろう。


だけどこのことを前もって話せば、おそらくチョコは「無理しなくていいから! いらないよー」と言うに決まっている。

だから、このことは今日まで黙っておいたというわけだ。

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