One Day~君を見つけたその後は~
──こうして。

俺たちはどう考えても場違いなこの貴金属店に足を踏み入れた訳だが、何故か俺もチョコも入り口に佇んだまま、足を一歩前に進めることができないでいた。


俺は、めずらしく黙って隣に立っているチョコの方を向くと、言った。

「指輪、好きなの、選んでいいから」


──やべっ!

言い慣れない言葉に緊張しすぎて、舌をかみそうだ。


俺はチョコに緊張していることを悟られたくなくて、ずかずかと一人で先に店の奥まで歩くと、ガラスケースの中でキラキラと輝きを放っている指輪をひとつ指さした。

「ほら、コレなんてどうだ?」

だけど……次の瞬間、値札を見てぶったまげた。

ちょっと待て、ひとつ桁が違うじゃないか!

「いや……やっぱりコレは無理だな」

はぁ……。
何が悲しくてこんな自己解決やってんだよ、俺は。



店員は相変わらず少し離れた位置から、そんな俺たちを生暖かく見守っていた。

なんだ? 
高校生のくせに、場違いだって笑ってるのか?

……なんだか嫌な汗をかいてきたぞ。



すると、それまで黙っていたチョコがふっと笑った。

そして、軽やかに俺の隣へ歩み寄ってくると、

「陽人、出るよ!」

そう言って俺の腕をぐいっと引っ張り、店を出ようとした。


「おいチョコ、ちょっと待て!」

「いいから、こっちこっちー」

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