One Day~君を見つけたその後は~
強引に、チョコに引っ張られるように店を出たあと立ち止まったのは、数軒先にある雑貨屋の前だった。

その店先には、指輪やネックレスといったアクセサリーが並んでいた。

だけど、それらは、さっきの店で見たようなピカピカのガラスケースに陳列されているわけではなく、あまりにも無造作に投げ出されていて。

スポンジ製の簡単な土台に体半分埋め込まれた指輪やら、ビニールタグでいくつもまとめて吊されたネックレスやら。

しかも指輪には、どれも値札がついていない。
……と思ったら、その土台に下手くそな手書きの文字で「どれでも1980円だよ!」と書かれてあって力が抜けた。


チョコは、そんな指輪を指さしながら言った。

「陽人、これにしよ!」

「はぁー!?」

俺は、自分の顔がどんどん赤くなっていくのが分かった。


「バカにするな!」


恥ずかしさと、

腹立たしさと、

だけど正直なところ、あの息苦しい店から脱出することができてホッとした気持ちと。


……なんだかそんな自分が情けなかった。

「チョコ、俺がこんなものしか買えないと思ってるのか?」

あぁ、これじゃ八つ当たりだ。

そう思いながらもチョコの腕を振りほどこうとすると、それを察していたのかチョコが俺の腕にしっかりと抱きついてきた。

そして、俺の目の前にVサインをした手を突きつけながら、こう言った。


「そのかわり、ふたつだからね!」


「──はあ?」

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