One Day~君を見つけたその後は~
「なぁ、チョコ」

俺の呼びかけに、チョコが「なあに?」と振り返る。

「指輪……ちゃんとしたヤツは、大学出て、自分で稼いだ最初の給料で買うから。だからそれまで、それで我慢してくれるか?」


チョコはもう一度俺の隣に並ぶと、その腕を俺の腕に絡ませてきた。


「ねえ、それってもしかして、プロポーズ?」

「プロポーズの……予告だ」


自分で言っておいてなんなんだが、なかなか感動的な台詞だろ?

言ってる俺の方が感極まってくる。


……チョコにこの熱意は伝わっただろうか?



だけど、

「やったぁ! 楽しみにしとくねー」

チョコはやはりここでも、満面の笑顔だった。

その無邪気な笑顔、眩しすぎてクラクラするぞ……。



そうしていろんな店を眺めながらしばらく歩いた後、次にチョコが立ち止まったのは旅行代理店の前だった。

「ちょっと待って!」

そう言うと、チョコは店先のパンフレットをじっと眺め始める。

「旅行?」

「うん、まだ先だけどねー。あの二人と一緒に卒業旅行に行きたくない?」


またあいつらと一緒か?

……俺は二人きりでもいいんだけどな。

いや、むしろ二人だけの方がいいぞ。


だけどそんな俺の想いを知る由もなく、チョコは嬉しそうに「沖縄なんていいよね!」とラックからパンフレットを次々に抜きとっていく。

どうやら週明けにでも、これで深月とひと騒ぎするつもりだろう。


……全く、気が早いヤツだな。

まだ受験が始まってもいないというのに。
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