One Day~君を見つけたその後は~
ああ、やっとここから本題だ。
前置きが長くなって本当にごめん。

俺がこのネカフェに通ってる理由──なんだけどね。

高橋と俺が隣の席だった時、俺が『ネカマになってメールのやりとりをしている相手がいる』って話をしたこと……覚えてるかな?

実は俺、毎週、その人に会うためにここに通っているんだ。


その人の名前は、聖華(キヨカ)さん。
本人が「さん」付けされるのがイヤだって言うもんだから、俺はいつも「キヨちゃん」って呼んでる。
俺だけじゃないんだよ。ここの店員や常連はみんな、彼女のことをキヨちゃんって呼ぶんだ。


……年上で、しかも社会人なんだけどね。

今ではすっかり慣れちゃったけど、そんな女性を「ちゃん」付けするなんて、最初はかなり抵抗があったんだよ?


キヨちゃんは、推定20代半ばかな?
一度年齢を聞いたことがあるんだけど、返事のかわりに無言でパンチが飛んできて。
それ以来、年齢の話は禁句になっているんだ。


キヨちゃんは、このネカフェが入っているビルの5階にある、英会話教室の講師でね。
土曜日は16時から17時が授業の入っていない空きコマらしくて、その間いつもここで休憩しているんだ。

──そう。

今日も16時を過ぎた頃、キヨちゃんは靴(パンプスっていうのかな?)をカンカン鳴らしながらこのオープンスペースにやってきて。

そして満面の笑みで俺の隣席に座りながら、いつものようにこう言ったんだ。


「おはよう! また会ったね、メガネ!」

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