One Day~君を見つけたその後は~
また話が逸れて悪いんだけど……

知り合ってかれこれ1年以上経つって言うのに、キヨちゃんは未だに俺の名前を覚えていない。
……っていうか、一度だって名前を聞いてくれたことがないんだ。

ただ、初めて会ったときに俺がメガネをかけていたっていう、それだけの理由で「メガネ」呼ばわり。

ねえ、これってどう思う?

それが気に入らなくて、ささやかな抵抗のつもりでカラーコンタクトに変えてみたんだけど、それでもちっとも効果が無くて。
キヨちゃんには「何したって、メガネはメガネだよ」って一蹴されたよ。

せめて人らしく、名字で呼んで欲しいんだけどね。


そんなキヨちゃんは、受付で必ず「いつもの」ドリンクを注文してから席に着くんだ。
だからキヨちゃんの後を追いかけるように、店員がグラスを運んでくるんだけど。

……信じられる?
6時以降も授業があるっていうのに、グラスの中身はビールなんだよ。

いくらなんでもそれはヤバい気がするんだけど、当人は
「分かってないなぁ、これがあるからまた頑張れるんだよ!」
って喉を鳴らして一気飲み。
大きな声じゃ言えないけど、ビールを飲み干した後の笑顔はかなりオヤジくさいんだ。


キヨちゃんは、「天真爛漫」って言葉が本当に良く似合う。


両親の仕事の都合でアメリカ暮らしが長かったらしく、英語がペラペラで。
ヒトリゴトも、口ずさむ歌も、ほぼ英語なんだ。

そのくせ動画サイトで演歌を視聴しては
「演歌はいいよね、胸に染みるよね!」
ってしょっちゅう泣いてるし。


変わった人だと思うだろ?
でも、そんなキヨちゃんのこと、俺はかっこいいなぁって思うんだ。

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