One Day~君を見つけたその後は~
思えば、今日のキヨちゃんは酔っていたのかな? 
いつもに増してご機嫌だった気がするよ。

そのせいかどうかは分からないんだけど、キヨちゃんってばひどいんだ。
聞いてくれる?

キヨちゃんが足を組み替えた時、足に引っかけていたパンプスが脱げちゃって、俺の足元に飛んできたんだけどね。

その時、キヨちゃん、なんて言ったと思う?

「メガネ~! ちょっとその靴取って、履かせて頂戴」
だって!

唖然としている俺の隣で。
無邪気な顔をしたキヨちゃんは、俺に向けて足をピンと伸ばすと、その指の先をクイクイって動かしてさ。
足までもが、まるで俺に命令してるみたいだったよ……って、実際に命令されたんだけどね、俺。

(女王様かよ!)

口に出すと怖いから心の中でそう叫んで。
俺は、黙って椅子から降りると、俺の足元でひっくり返っているパンプスを拾い上げたんだ。

そして、キヨちゃんの足元にひざまづいて、脱げたパンプスを恐る恐るキヨちゃんの足元に持っていった。
その時は緊張していたから、「どうぞ」なんていう簡単な言葉も出なかったなぁ……。


だけど、キヨちゃんは簡単には靴を履かせてくれなかった。

「ほらほら、メガネ、早くして~」

なんて言いながらも、俺が差し出すパンプスから逃げるように、楽しそうに、足をあっちこっち動かして。
でも、だからといってキヨちゃんの足を掴むわけにはいかないから、俺はあたふたするだけだったよ。
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