THE CANCEL
桜が綺麗に咲き乱れる
毎年ここを訪れるが、いつも変わらず咲いている
家から自転車で10分
風に揺られ、雪のようにひらひらと散る花吹雪
ほんと、毎年変わんないな……
フフッと自嘲気味に笑ってみる
いつもと変わらない
いつもと違うのは、ここにいるのが自分一人だけということ
「去年は楽しかったなぁ……」
ふと思い返される去年の今日
皆でここに来て、お花見して、弟がはしゃいで、お父さんもお母さんも『今日は特別』って言って
皆で笑ったっけ
つい昨日の事のように鮮明に覚えてる
――『また皆で来ようね』
約束は果たされないまま
もう一年経ったよ
そっと、その太い幹に触れてみる
もう涸れたと思ってたはずの涙がこぼれ落ちた
この桜、千年桜と呼ばれ、願を懸けるとその願いが叶うという
そんな迷信じみたこと、信じるわけがない
信じてない、けど
もし願いが叶うならば
叶えてくれるなら
この、決して叶うことのない願いを叶えてほしい
『また皆で笑えますように』