THE CANCEL
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「――ハァッ、ハァッ」
ここは何処だろうか
やみくもに走っていたので、場所が分からなくなっていた
門を出る時、誰かにぶつかったが気になんてしていられなかった
嘉陽の頭の中は真っ白だった
『化け物じみてるわ』
ふいに蘇る声
――ガッ
袴の裾に足が引っ掛かり、そのまま倒れる
うまく転んだのか、手を擦り切る程度で終わったが、立ち上がろうとした瞬間、バッと手で口を覆う
――気持ち悪い
「――ッ!うッ……オェ……」
吐き気に堪えられず、四つん這いになって嘔吐する
しかし吐き出したところで楽にならず
『化け物じみてるわ』
気持ち悪い
きもちわるい
キモチワルイ
「――うッ! ゲホッ ゲホッ」
視界が揺れる
なんでかな、上手く息が吸えない
だんだん地面が近づいてくる
あ、チィちゃんにありがとって……言わ……なきゃ……
そこで意識が途切れた