THE CANCEL
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「ひーじかーたさーん」
「……」
「ひーじーかーたーさーん」
「……」
「ひーじ「だぁッ、うるせぇ!!
んな呼ばなくても聞こえてらぁ!!」」
京の、とある団子屋の前で
総司はなんとも物欲しそうな顔をしている
「だんご「買わねぇよ」
うわ なんで分かったんですか!?私まだ『だんご』しか言ってないのに!」
わざとらしく驚いてみせる総司
すごーい、
と笑っているが、目は笑っていない
視線で『早く買え』と訴えてくる
はぁ……
溜め息をつき、何となく視線をずらすと
視界に何かが映った
人……か……?
人、おそらく子供が倒れていた
いきなり現れたか?
先程まではいなかったはずだ
なのに、ずっとそこにいたかのような雰囲気を醸し出していた
俺の視線に気付いたのか、総司は目付きを変え、近づいていく
俺も鞘に手を掛け、いつでも抜刀できるようにし、ソレを足で蹴ってみた
「……」
「反応ないですね……」
もう一度強く蹴ってみるが、起きる気配がない
それを確認し、総司が俯せの体をひっくり返した
やはり、というべきか
ソレは子供だった
何故ガキが一人で、こんな道のど真ん中で倒れてるんだ…?
「怪しいですねぇ! 土方さん この子を屯所に連れていきましょう!」
「おいッ お前は楽しんでるだけだろ!!」
「そんなわけ、ありませんよ!」
満面の笑顔で反論するが、まるで説得力がない
よいしょ、
と子供を背負い
「土方さん! 私先に行ってますね!」
嬉しそうに駆けていった
面倒な事にならねぇといいが……
はぁ……
「おい、団子五本くれ」
俺も、団子を買い屯所へと向かった