THE CANCEL
俺は部屋を出て、まっすぐ井戸へと向かう
道場で稽古をしている声が聞こえてきた
きっと今頃、新八達が扱いてるんだろう
俺の後から総司が静かについて来る
俺の考えが分かったのだろうが、何も言ってこない
当たり前か
興味があるとはいっても、今このガキは不審人物の何者でもない
近藤さんに牙を向けるような奴だったら、こいつは躊躇なく切り捨てるだろう
井戸へ着くと水を汲み上げ、一気にぶっかけた
「――ッ、ゔ……ぁ……ゲホッ、ゲホッ」
ようやく目が覚めたのか、ガバッと起き上がり、苦しそうに咳き込む
しばらくして、咳が治まると不思議そうに辺りを見回した
俺が持っていた桶に目が止まる
そして、納得したように
あぁ、
と呟いた
一見、間が抜けてそうに見えるが、油断は出来ない
そっと、刀に手を掛ける
そんな状況にも関わらず、ソイツの顔は無表情だった