君だけを
ねぇ、ゆい?
~第一章~始めての二人乗り。
ーねぇ?
ゆい?聞こえる?
あのね。大好き。
僕はあの春。君と出会いました。
僕、岡春樹(マツオカ ハルキ 16歳。)
この春、高校生2年生になる。
でも今それどころじゃない!
始業式早々寝坊した!
自転車必死に飛ばしてるとこです(泣)
信号無視を何回も成功させ、やっと歩道橋の横の
通路まで来た。
ここまでくれば間に合う!ギリセーフかな。
ん!?うわっ!?
キキキーッ
いきなり女の子が角からでて来て、目の前を歩いた。
危うくぶつかりそうになって急ブレーキをかける。
女の子はこちらに振り返ると
「あれ.....あ、....ごめんなさい」
と言った。いや、つぶやいた。
そしてゆっくり歩いていった。
危なかったぁ...でもあの子....
あんなに大きいブレーキ音がしたのに
全然驚いた様子もなかったな...
ん?てか同じ制服!同じ学校か!?
見たことないけど....
だとしたら遅刻だぞ!?
なにのんきに歩いてんだあの子!
僕は自転車をとばし、彼女の後を追う。
「ねぇ!」
声をかけても気づく様子はない。
急がなきゃ!
「ねぇ、君!」
その女の子が君だった。
僕は君の腕をつかんだ。
君は目を丸くして驚いていた。
「自転車....後ろ乗ってかない!?
遅刻しちゃうよ!?」
君は驚いた顔をしていたね。
僕も驚いた(笑)
僕は普段お節介なんてしたことがなかったら。
だけど君はなぜだか放っておけなかったんだ。
しばらくの沈黙の後、君は小さくうなづいた。
僕はなんだか無理矢理誘ってしまったみたいな気がした。
僕は君は二人乗りなんて嫌いなねかと思ったけど
今はそんなことは言ってられない!
「後ろ。乗って?」
君は後ろに座った。
いつも一人の自転車より
なんだかペダルに重みがあって
君が後ろにいるぬくもりと感覚があったことを
すごく覚えてるよ。
僕はいそいでまた自転車をこぎだす。
自転車はデコボコ道でガタンガタン揺れる。
大きく揺れた拍子に君は僕にそっとしがみついた。
正直ドキッとした(笑)
「大丈夫?」
君は小さな声で
「こんなの...初めて。二人乗り....ずっと憧れでした。」
嬉しそうに可愛くつぶやいた。