君と僕のボーダーライン
思い出の中に割って入る私が言うべき事じゃないかもしれない
だけど、これ以上高杉君に気を遣わせるのも嫌だった。
なんとなく感じたんだ。
高杉君はきっと心の中に色々な想いを溜め込んでいる
それを押し殺して私に優しくしてくれている、そんな気がするんだ。
私はもう、高杉君の恋人にはなれない
けど、近いところで支えてあげる人になりたい
せめて、それくらいは許してほしいんだ。
少しずつ、この想いとけりをつけて高杉君がこの前言ったように兄妹、そして家族に近づいていかなくちゃいけないのはちゃんと分かってるから
「ねえ、今日から咲絢も『高杉さん』だよ?いい加減高杉君って言うのやめよう?」
『え、でも…どう呼べば、』
「何でもいいよ。隼人でも、何かあだ名つけてくれても」
高杉君が持っていたぬいぐるみを半分奪い取るように取って、ぬいぐるみとちょっと見つめ合う。
するとまた突然高杉君がとんでもない事を言い出す
確かに今日、お母さんたちは再婚するから私も『高杉』になるんだ。
そう思うとまたドキン、と胸が高鳴った。
その高鳴りに違う、私が望むものじゃないと言い聞かせる
だけど、隼人って呼んでもいいって言われた事にまたドキン、と鼓動は正直に音をたてる。
「そんな悩む事?」
『え、あぁ そりゃあ…』
呼びたいけど呼んじゃいけない気がして、だけど他に何も思い浮かばなくてぐるぐると考えていたら、高杉君がクスッと笑った。
そりゃそうだよ、だって好きな人を呼ぶんだよ、って言いそうになって変なところで私は口をつぐんだ
何を言おうとしてるの、私ってば
「悩むなら隼人って呼んでよ。それでいいでしょ?」
また髪に高杉君の手が触れる。
顔を上げると高杉君は笑ってそう言って、ぽんと撫でていた手を一回弾ませて部屋を出ていった。
私はその場所から動けずに、両手で顔を覆ってずるずると座り込んだ。
嫌でも分かる、今私の顔きっと赤い
どうすればいい?
どうすれば忘れられる?