君と僕のボーダーライン
同時にまたひとつ高杉君に近づいた気がして、嬉しかったりもするから私の心の中は今、ものすごく複雑に絡み合っている。
『…は、隼人、君』
「んー、君はいらないでしょ。はい、もう一回」
『え……はは、隼人』
「よく出来ました^^」
名前ひとつ呼ぶだけでこんなに緊張するのはこの想いを捨てきれていない証拠。
ゆっくり家族になっていこう、そう決心したはずなのに
私だけに見せてくれる笑顔に、そっと髪を撫でる優しい手に、私はもう壊れそうなくらいドキドキしてる。
不意にこんなに苦しいくらい涙が溢れそうになる
寝不足で倒れたあの日みたいに嫌だと泣けたら。
どんなに楽だっただろう。
もう一度あなたを想っていても、もう叶う事はないのかな。
「咲絢、どうかした?」
『ううん。大丈夫。』
そんな日は来ない。
解ってるよ。
溢れそうな涙は作り笑いの中に埋め込んで粉々に潰してしまおう。
あなたの前では二度と泣かない。
これが私なりの、家族と好きな人の、境界線
さよなら『高杉君』。
隼人と呼ぶことは距離が近づいたように見えて別の意味では距離が一番遠くなる
だけど、それをいつまでも嘆いてたってしょうがない。
隣で笑ってくれる、それだけでいい
そう思って生きていく。
案の定、教室の前で隼人と別れてから質問攻めされた。
だけど笑って言うことができた。
『親同士が再婚して家族になったの。ただそれだけだから安心して』
ほとんどの女の子はそれで納得して羨ましいと言いながら自分の席に帰っていく
だけど一番の親友は私の言葉に一人だけ苦い顔をしていた
大丈夫?と小さく口が動いたのがわかった
それにまた私は作り笑いで答えた
『大丈夫だよ』