狂想曲
薬が効いてきたのか、奏ちゃんはお粥を食べた後、また眠った。
私はそれを確認してから自室に戻った。
ベッドに寝転がって、奏ちゃんの言葉を脳内で巡らせる。
いくら川瀬社長がお父さんと昔から知り合いだったとはいえ、私は顔すら知らないのに。
なのに、奏ちゃんはきっと、そうじゃない。
一体何があったというのか。
知りたいような、でも知るのが怖いような。
ぐるぐるぐるぐる、同じことばかりが頭の中で繰り返される。
「はぁ……」
だから漏れるのはため息ばかり。
私は寝転がったまま、手探りで、ベッド脇に置いてあるローテーブルの上のものに手を掛けた。
昔、お父さんが私の誕生日に手作りしてくれた、簡易性のプラネタリウム。
スイッチを押すと球体の中のライトが灯り、壁に映し出された夜空がくるくると回りだす仕組みだ。
私は天井に向かって手を伸ばした。
「ねぇ、お父さん。お父さんは何を残したまま死んじゃったの?」
なんて、偽物の夜空に向かって語りかけたところで、答えなんて返ってくるはずもないのに。
私は余計に虚しさに支配された。
こんな時、お母さんさえいてくれならとは思ったけれど、でも私は連絡先さえ知らないから。
「はぁ……」
またため息が漏れた。