狂想曲
触発
雨の夜。
私はキョウの部屋の、キョウの匂いのするベッドで、まどろんでいた。
背中に重みがのし掛かってくる。
「寝るなよ、律」
キョウは笑いながら、うつ伏せていた私の体を反転させた。
ねぇ、キョウはあれから好きな人とはどうなったの?
なんて、聞けるはずもなくて。
降ってきたキョウの唇を受け止めた。
「ねぇ」
「んー?」
「私なんかのどこがそんなにいいの?」
「さぁ?」
生返事しか返さないキョウはいたずらに私を抱き締める。
その時、邪魔するように鳴り響いたキョウの携帯の着信音。
キョウは「うぜぇ」と言いながら、ベッド脇に置いたそれを手繰り寄せ、
「はい。あぁ、じゃあそれ今から持って行きますよ。大丈夫です。はい、じゃあ、よろしくお願いします」
キョウは手短にだけ話して電話を切る。
「仕事?」
「あぁ。いい話になった」
「そっか。よかったね」
キョウの仕事はブローカーだと聞いた。
ブローカーと言えば聞こえは悪いかもしれないが、車やブランド品なんかを、転売して利益を得ているらしい。
「俺これからちょっと出なきゃだし、どうする? 2,3時間で戻ってこれると思うけど、寝てるか?」
「ううん。私帰るよ」