狂想曲
「マジで?」

「お兄ちゃん、この前、熱出しちゃって。それからあんまり調子よくないみたいだから心配だし。それに、もし早退して帰ってきた時に私いなかったらまた怒られるから」

「あぁ、例の“私のことを好きかもしれないお兄ちゃん”ね」


キョウは嘲笑するように言った。



「そんなに“私のことを好きかもしれないお兄ちゃん”が気になるわけだ?」

「そういうことじゃなくて。兄妹なんだから当たり前じゃない」

「当たり前って誰が言ったの。兄ちゃんがそう言った? だったら洗脳でもされてんじゃねぇの」

「何それ」

「俺何か間違ったこと言ったか? あんた兄離れできないやつの典型って感じ」

「そういう言い方ってないでしょ」

「兄妹だから、何? 世の中には血の繋がりの中で憎しみ合ってるやつらだってごまんといるってのに、勝手に当たり前とか決めつけんなよ」


私は体を起こした。

キョウはそんな私から目を逸らさない。



「キョウは兄弟とかいないの?」

「いるよ。弟が」


意外な返答だった。



「まぁ、血が繋がってるだけで、俺はあいつの兄じゃないし、あいつは俺の弟じゃない。兄弟だとも言えない兄弟っつーか」


わけがわからない。


キョウはベッドから抜け出て、床に散らばっていた服を集める。

そして私にワンピースを投げながら、



「なぁ、いつまで“私のことを好きかもしれないお兄ちゃん”と暮らす気?」

「え?」

「よくそんな気味の悪いやつと一緒にいられるな、って言ってんだよ」


キョウが何でいきなり怒りだしたのかわらない。

でも、私と奏ちゃんのことを、関係ないキョウにとやかく言われる筋合いはない。
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