狂想曲
「でもね、不思議なもんで、血が繋がってるからなのか、気になっちゃうんだよね、妹のこと。ふとした時に思い出したり、急に心配になったり」

「………」

「長男・長女って、余計にそういうのあると思うんだけど。普段は何とも思わないのに、いざって時は、あたしがしっかりしなきゃ、あたしが守ってあげなきゃ、ってさ」


百花は、「変でしょ」と言いながら、自嘲気味な笑みを零した。


奏ちゃんに置き換えて考えてみる。

奏ちゃんの、私に対する過保護なまでの愛情は、だからなのかもしれないと思った。



その時、私の手に握っていた携帯が着信音を鳴らした。



キョウだと思ってディスプレイを見て、見事に肩透かしを食らってしまった。

そこには【レオ】と表示されていた。



「律さん、何やってんのー?」

「今はいつものバーで友達と飲んでるけど」

「ほんとに? ぼくも今近くにいるんだけど、行っていい?」

「だからぁ、今は友達といるって言ってるじゃない」


言いながら、百花に目をやると、



「誰? 男? いいよ、いいよ、合流してよ!」


電話口にも聞こえるほどの声で、嬉々として言う。

先ほどまでの顔はどこへやら。


電話越しに、レオの笑い声が街の雑踏に混じって聞こえてきた。



「じゃあ、お言葉に甘えて、すぐに向かうね。楽しみだなぁ、律さんの友達に会えるの」


電話を切った私は呆れ顔だった。



「ちょっと、百花! 勝手なこと言わないでよ!」

「ねぇ、誰? どんな人?」


聞いちゃいない。


私は急に襲ってきた疲労感に肩を落としながら、「友達だよ」としか返せなかった。

レオのことはそれ以上の説明はできないから。

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