狂想曲
奏ちゃんは、未だ納得できずに憮然としてる私の元に、私が作ったケーキを持ってきた。

そして自分で数字の2の形になったろうそくを二本立て、それに火をつけて、部屋の電気を消す。


夕方だからか、部屋は真っ暗にはならない。



「まだ食べ終わってないのに」


ぶつくさ言いながらも、恒例行事だ。

私は自室から奏ちゃんに渡すプレゼントを持ってきて、ハッピーバースデーの歌を歌いながら、それを奏ちゃんに渡した。


奏ちゃんは「ありがとう」と言って紙袋を受け取り、ふうっ、とろうそくに細く長い息を吹きかける。


揺らめいて、消えた炎。

しんと静まり返る薄暗い部屋。



奏ちゃんは、なのに電気をつけるために立ち上がろうとはしない。



「奏ちゃん、どうしたの?」

「あのね、実は俺からも律にプレゼントがあるんだ」

「え?」

「目、瞑ってて」


私は首を傾げながらも、言われるがままに目を瞑った。

何が待っているんだろうかと思いながら。


奏ちゃんが動く気配を五感で感じた、その時。



「……んっ」


唇に触れた違和感。

驚いて目を見開いた私の目の前にある奏ちゃんの顔。



「今、何したの?」


キスされた?

いや、でも、そんな馬鹿な。



「ごめんね、嘘ついて。でも、こうでもしなきゃできなかったから」
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