狂想曲
百花と別れて、今日は真っ直ぐ帰宅した。
電気がついてたことには驚いた。
「おー、律おかえり。パスタ茹でようと思ってたんだけど、食う?」
「食べる、食べる。っていうか、私するよ」
荷物を放り投げてキッチンに向かう。
奏ちゃんは「ラッキー」と笑った。
「今日、仕事休みだったんだ? 私聞いてないよ」
「仮病でーす」
「うわー。ナンバーワンのくせにそんなことしてもいいの?」
「ダメだけど、バレなきゃいいっしょ。っていうか、バレても怒られないよ。俺に辞められたら困るんだって、向こうも」
飄々と言いながら、奏ちゃんは冷蔵庫から缶ビールを取り出した。
私は少し呆れてしまう。
「言うことが違うねぇ、人気者は」
「どうだっていいよ。俺、別にホストって仕事に執着ないし。普通より儲かるからやってるだけだもん」
「ふうん」
「俺さぁ、これでも社長に気に入られてるんだよね。で、将来的には店任せてもらえるっぽくて」
「マジで?」
「所詮は雇われ店長だけど、それでも先の見えない毎日の中で酒ばっか飲んで客の機嫌取ってるよりマシ」
奏ちゃんは学生の頃から頭がよかった。
中学の頃は生徒会長とかもやってたし、だから経営とかも向いているのかもしれないけれど。
「心配だなぁ、奏ちゃんのこと」
「どうして?」
「だって絶対無理してるでしょ。私はもう子供じゃないんだから、お金のこととか気にしなくていいし、奏ちゃんには好きなことしてほしいのよ」
ぐつぐつと鍋の湯が煮立つ。
湯気がもわんと私たちを包む。