狂想曲


いつの間に眠っていたのだろう。

気付けば私はベッドにいた。


深夜1時を指す時計を眺めながら、ここがキョウの部屋であることを確認して、ほっとした反面、奏ちゃんとのことが夢ではなかったのだと改めて思わされて。



「さっき口開けて寝てたぞ」

「うそっ」

「嘘」


煙草を咥えたキョウが笑う。

その手には、手の平サイズの木箱があった。



「ねぇ、それ何?」

「オルゴール」

「……オルゴール?」

「そう。この蓋開けてみろよ」


言われるがままに体を起こし、それを受け取って、蓋を開けた。


ぜんまい仕掛けでピアノを弾くように動く小人と、鉄琴のような単音のかなで。

ハッピーバースデーの歌が流れる。



「これ、俺が10歳の誕生日に、ずっと貯めてた小遣いはたいて買ったやつ。自分で自分にプレゼントっつーか。ガキなりに宝物にしてたんだよ」

「どうしてそんなものを、今?」

「そういやこれ買ったの、12年前の今日だったなぁ、って、思い出したから」

「……え?」


驚いた私の手からオルゴールをひょいと取り上げたキョウは、



「俺今日誕生日なんだよね。22だよ。おっさんじゃん?」


キョウは、奏ちゃんとまったく同じ日に生まれたという事実。

しかも同い年なのだから、余計に私は驚かされた。



「何固まってんの。おめでとうくらい言えよ」

「あ、うん。おめでとう」
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