狂想曲
「るりちゃん。今はそんな話しなくていいから」
「そうね。そうよね。私、余計なこと言っちゃったわね。キョウくんは今幸せなんだものね」
そしてるりさんは、カゴの中に入れていたじゃがいもの袋を、私のカゴの中に入れた。
「やっぱり今日はやめるわ、肉じゃが。だから、このじゃがいもで、キョウくんに何か美味しいものを作ってあげてください」
余計なお世話だ。
るりさんは私に向かって涙の混じる顔でほほ笑んだ。
取り立てて美人だとも言えないような、年上で人妻で妊婦のこの人に、なのに私が勝てる要素なんてない気がして。
ずっしりと、じゃがいもの所為で重くなったカゴの重みが、肩にまで伝わる。
「待ってよ。るりちゃん、送るから」
「いいわよ、そんなの」
「何遠慮してんの」
「遠慮とかじゃないでしょ。キョウくんは自分のことだけ考えてればいいの」
るりさんは私に軽く会釈して、キョウに「それじゃあね」と言って、立ち去った。
息を吐いたキョウは、片手で顔を隠すように覆う。
だけど、少しして、
「なぁ、何食わしてくれんの?」
その顔がこちらに向けられた時にはもう、先ほどの苦しそうな表情は消えていた。
キョウは今のことに触れないつもりなのだろうか。
それとも、触れたくない?
「ポテトサラダにでもしようかな。あとは、ハンバーグとか」
「いいね、それ。でももう焦がすなよ」
「しつこいー」
笑いながらも、私は、とても肉じゃがを作る気にはなれなかった。
「そうね。そうよね。私、余計なこと言っちゃったわね。キョウくんは今幸せなんだものね」
そしてるりさんは、カゴの中に入れていたじゃがいもの袋を、私のカゴの中に入れた。
「やっぱり今日はやめるわ、肉じゃが。だから、このじゃがいもで、キョウくんに何か美味しいものを作ってあげてください」
余計なお世話だ。
るりさんは私に向かって涙の混じる顔でほほ笑んだ。
取り立てて美人だとも言えないような、年上で人妻で妊婦のこの人に、なのに私が勝てる要素なんてない気がして。
ずっしりと、じゃがいもの所為で重くなったカゴの重みが、肩にまで伝わる。
「待ってよ。るりちゃん、送るから」
「いいわよ、そんなの」
「何遠慮してんの」
「遠慮とかじゃないでしょ。キョウくんは自分のことだけ考えてればいいの」
るりさんは私に軽く会釈して、キョウに「それじゃあね」と言って、立ち去った。
息を吐いたキョウは、片手で顔を隠すように覆う。
だけど、少しして、
「なぁ、何食わしてくれんの?」
その顔がこちらに向けられた時にはもう、先ほどの苦しそうな表情は消えていた。
キョウは今のことに触れないつもりなのだろうか。
それとも、触れたくない?
「ポテトサラダにでもしようかな。あとは、ハンバーグとか」
「いいね、それ。でももう焦がすなよ」
「しつこいー」
笑いながらも、私は、とても肉じゃがを作る気にはなれなかった。