狂想曲
世間では、付き合おうと言ったら恋人関係は成立する。
だからそういう意味では私とキョウはカレシ・カノジョなのかもしれない。
けれど、私はキョウの何を知っているだろう。
「とにかく私も晴れて兄離れしたってことだよ」
言って、終わらせようとしたのに。
なのに百花は私の返答に怪訝に眉根を寄せ、
「待ってよ。あんたカレシのことわかんないって、何?」
「……何って言われても」
「律さぁ、今の言葉聞いてたら、とりあえず奏くんと一緒に暮らしたくないから男の家に転がり込んだ、っていう風に受け取れるけど」
「ちょっと、やめてよ」
どきりとした。
百花の言葉は時々ストレートすぎて困る。
「律、ほんとにその男のこと好きなの?」
「何言ってんのよ」
喉がカラカラに渇く。
百花の真っ直ぐな視線が痛い。
言葉に詰まって私が目を泳がせた、その時。
「あ、メールだ」
救いのように、鳴り響いた百花の携帯の着信音。
私はほっと安堵した。
「ごめん、用事できたわ」
内容を確認して、それを閉じた百花は、言いながら、伝票を持って立ち上がる。
よっぽど急いでいるらしい、「またゆっくり話そう」とだけ言い残し、さっさと向けられた背中。
私はその後ろ姿を見つめながら、重い息を吐いて背もたれにもたれ掛かった。
だからそういう意味では私とキョウはカレシ・カノジョなのかもしれない。
けれど、私はキョウの何を知っているだろう。
「とにかく私も晴れて兄離れしたってことだよ」
言って、終わらせようとしたのに。
なのに百花は私の返答に怪訝に眉根を寄せ、
「待ってよ。あんたカレシのことわかんないって、何?」
「……何って言われても」
「律さぁ、今の言葉聞いてたら、とりあえず奏くんと一緒に暮らしたくないから男の家に転がり込んだ、っていう風に受け取れるけど」
「ちょっと、やめてよ」
どきりとした。
百花の言葉は時々ストレートすぎて困る。
「律、ほんとにその男のこと好きなの?」
「何言ってんのよ」
喉がカラカラに渇く。
百花の真っ直ぐな視線が痛い。
言葉に詰まって私が目を泳がせた、その時。
「あ、メールだ」
救いのように、鳴り響いた百花の携帯の着信音。
私はほっと安堵した。
「ごめん、用事できたわ」
内容を確認して、それを閉じた百花は、言いながら、伝票を持って立ち上がる。
よっぽど急いでいるらしい、「またゆっくり話そう」とだけ言い残し、さっさと向けられた背中。
私はその後ろ姿を見つめながら、重い息を吐いて背もたれにもたれ掛かった。