狂想曲


夕方になっていた。

いつも用もないのに電話してくるレオは、なのにこういう時に限って連絡が取れないんだから腹が立つ。


私は不貞腐れ半分で、駅前にある変な銅像に寄り掛かっていた。


と、その時、私の手に握っていた携帯が馬鹿みたいなメロディーを響かせた。

【キョウ】と表示されているディスプレイを見て、私は驚きながらも通話ボタンに親指を載せた。



「昨日さぁ、ごめんな」


キョウの開口一番はそれだった。



「泣かせたし。仕事あって夜帰れなかったし。あと、ポテサラも食えなかったし」


先に謝られたら何も言えなくなる。

謝らなければならないのは余計なことを口走ってしまった私の方なのに。



「キョウ、怒ってるのかと思ってた」

「何でそうなんの」

「だって……」


だってキョウ、本当はるりさんのこと好きなんでしょ?

と、喉元まで出かかった言葉は、だけどもそれ以上は発せなかった。


私は唇を噛み締める。



「私ね、キョウに嫌われたどうしよう、って」

「だから何でそうなるんだっつーの」


言ったキョウは、



「とりあえず今どこ? 迎えに行くから」


場所を告げて、電話を切った。



西日の色に染まる街。

行き交う人々を見つめながら私は、その場で膝を抱えた。


次第に明確になっていく自分の想いが怖かった。

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