狂想曲
迎えに来てくれたキョウと一緒にファミレスでご飯を食べた。
そこで安いワインを飲んだ私たちは半端に酔っ払い、二件目に行こうと盛り上がった。
入ったのはキョウの馴染みらしいバーだった。
奥まった席のラブソファ。
間接照明だけの薄暗い店内には、ムーディーな音楽が流れていた。
キョウはマティーニを傾ける。
「やべぇ。俺ここで寝そう」
「ちょっと、ダメだってば」
小声でクスクスと笑う私たち。
まるで秘め事のように、指を絡め合い、ひそひそと話しては、合間で時々キスをしたりした。
外では手さえ繋ごうとしないキョウなのに、酔っ払っているとはいえ、本当に珍しいなと私は思った。
ピアスだらけのバーテンが現れたのはそんな時だった。
「お久しぶりっす、キョウさん。これ、俺からなんで、食ってください」
彼は籐のカゴを手にしていた。
その中には市販のチョコが。
「何それ」
「サービスっすよ。普段世話になってるんで」
バーテンは笑いながらそれを、私たちの前のテーブルに置いた。
「っていうのはまぁ、口実なんすけどね。キョウさんが女の子と来てるって店長から聞いて、俺びっくりして」
「それで覗きに来たわけかよ」
「だから、ほら、差し入れも一緒に」
笑顔の彼を見て、キョウは呆れたように肩をすくめ、私から体を離して煙草を咥えた。
話題の中心である私は途端に居心地が悪くなった。