狂想曲
キョウと一緒に帰っている道中、クラブの前を通りかかった時に見た、見慣れたふたりの後ろ姿。
百花とレオ。
一度は見間違いなのかと思った。
だけど笑い合うふたりの横顔を見たから、間違いないと確信した。
確信したけれど、でも今はどうだってよかった。
自分が思うよりずっと酔っ払っていた私には、それを気に留めるほどの余力はなかったから。
キョウは部屋に入るなり私を求めた。
私は流されるままにその求めに応じ、快楽に身を委ねた。
酒とチョコの味の混じるキスを繰り返しながら、芯まで思考はとろけていく。
キョウの黒い髪が私の体の上を這う。
唇が、私の弱い部分を繰り返し刺激する。
月明かりを背にした幸福の木の影が、部屋に真っ直ぐ伸びていた。
本当は、考えなければならないことはたくさんあるんだと思う。
でも、私は、そんな煩わしいことすべてから、今だけでも、逃げていたかった。
キョウのうがつ熱に、なぜだか泣けた。
だから私は心の中でキョウにごめんねと言った。