狂想曲
歪曲
もうすっかり夏なのに、なのにホテルの最上階のこの部屋は、まるで真冬のように冷房が効いていた。
「パパさぁ、寒くないの?」
「律は寒いのかい? パパは暑がりだからちょうどいいんだけど」
私がくる前に下階にある室内プールでひと泳ぎしたらしいパパは、気持ちよさそうにシャワー上がりの体をソファに投げた。
もう大金を稼ぐ必要もないのに、私は今もたまにパパと会っている。
パパにはずっとお世話になってきたから、もう会わない、と言って簡単に不義理にすることもできないから。
体を売っている自分を卑下しながらも、私は理由ばかりつけてずぶずぶとこの関係を繰り返す。
「律も泳げばいいのに。すっきりするぞ」
言いながら、パパは私を手招いた。
私がその傍まで行くと、パパは私にタオルで目隠しをする。
パパは最近、アブノーマルなセックスをしたがるから少し困る。
視界が覆われて、私はベッドに突き飛ばされた。
目が見えない代わりに、他の感覚が研ぎ澄まされて、変な気分になってくる。
真っ暗な中に浮かぶ、奏ちゃんの顔。
「やっ」
それでもパパは私を押さえ付け、犯すように行為を進める。
奏ちゃんの幻影に怯えて抗おうとする私の手首と首を掴みながら、パパはその手の力を強めていく。
「ほら、律、暴れたら痛くなるよ」
そして乱暴に挿入された指。
私は悲鳴にも似た声を漏らした。
『あの人は律さんが思ってるよりずっと危険だ』
最近、何となく、レオの言った言葉の意味がわかってきた気がした。
だからって私はもう、抜け出せない場所まで来てしまったのだろうから。