狂想曲
「別にレオと百花が友達だろうと恋人だろうとどっちでもいいの。ただ、私は、百花に対しては半端なことをしてほしくないだけなの」

「………」

「百花はね、真っ直ぐで惚れっぽいの。それがいいところでも悪いところでもあるんだけど」

「なるほどね」


みなまで言わずとも伝わったのだろう、レオは頷きながら、



「律さんは友達思いだねぇ」


わざとらしく私に拍手を向けた。

小馬鹿にされたような気分になる。



「あのねぇ、私は真面目に言ってるのよ」

「真面目でも不真面目でもいいけど、律さん、他人のことを気にする前にまずは自分の足元をちゃんと見たら?」

「え?」

「灯台下暗しさ。そこは案外気付かないものが多かったりするんじゃない?」


どういう意味だろう。

はぐらかしただけなのか、それとも何か知っているのか。


レオの言葉はいつも意味深で嫌になる。



それでもレオは前のめりのまま。



「ねぇ、律さんの本当の気持ち、ぼくにだけ教えてよ」


私は驚きのままに声も出なかった。

だから堪らず目を逸らす。



「あなたは誰からも愛される人だ」

「やめて」

「でも、本当はどうなの? あなたの心の中には」

「やめてって言ってるじゃない!」


金切り声で叫んでいた。

私の奥深く、霧のような中に隠している想いが、レオに暴かれそうで怖かった。

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