狂想曲
どうしてこんな時に、こんな場所で会ってしまうんだろう。

奏ちゃんの姿に私は声も出せなかった。



「……どうして、律が……」


目を見開いた奏ちゃんは、私の横にいるキョウにゆっくりと目を移しながら、



「どうして律がキョウと一緒にいるんだよ!」


叫ぶように言った奏ちゃんの言葉に、驚きを隠せない私。

何で、奏ちゃんが、キョウのことを?


私は恐る恐るキョウに顔を向ける。



「あーあ、奏の馬鹿。そんなこと言ったら全部台無しじゃん」


ふたりは私の知らないところで顔見知りだった。

これは、どういうこと?



「お前、何企んでるんだよ! 律に何した!」

「あのな、俺ら、付き合ってんの。だから邪魔しないでよ、“お兄ちゃん”」

「何だと?」

「それに、変なこと企んでんのは奏の方じゃない? 俺に対しても、律に対してもね」


キョウが吐き捨てた台詞に奏ちゃんはぐっと奥歯を噛んだ。

私はわけもわからないまま、ふらふらと足を一歩後退させる。


奏ちゃんの目が、私に向く。



「律。そいつが誰がわかって一緒にいるのか?」

「え?」

「お前はそいつに騙されてるだけなんだよ! どんな口車に乗せられたのかは知らないけど、キョウから離れろ!」


騙されてるって、何?

私は奏ちゃんとキョウを交互に見る。


息を吐いた奏ちゃんは言った。



「そいつは、川瀬 響。俺らの憎んでる川瀬の息子だぞ!」
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