狂想曲
衝撃と呼ぶよりもっと大きな驚きに、私は一瞬、思考が停止した。

真横のキョウは肩をすくめる。



「おいおい、言うに事欠いて、余計なことばらすなって。折角律と毎日楽しくやってたのに、どうしてくれんの」

「本当のことなの?」


私の問うた声は震えていた。



「本当だよ。俺は“律の家族を壊した川瀬社長”の息子だ」


私は反射的にキョウから離れた。

と、いっても、実際はまた一歩足を後退させただけだけれど。


キョウはクッと笑う。



「でも奏だって本当は川瀬の血の繋がった息子じゃん」



……え?



「律は知らなかっただろうけど、奏は俺の弟なんだよ。だから本当は、律と奏は兄妹なんかじゃないの。血の繋がりもない」

「やめろ!」

「どうしてそんな怒ってんだよ、奏。奏だって俺のことばらしたんだから、お互い様っしょ」

「やめろ、キョウ!」

「大体さぁ、奏がさっき俺にはじめましてって挨拶してればにこやかに終われたのに、血相変えて俺の名前なんか呼ぶからこんなことになったんじゃん」


思考が追い付かない。

こんなこと、笑い話にすらならない。



「何それ。ほんと、わけわかんない。冗談でしょ?」

「………」

「ふたりの言ってること、おかしいよ。だって私と奏ちゃんはずっと一緒だったし、私が生まれた時の写真には奏ちゃんも映ってたんだよ?」

「………」

「それに、キョウと奏ちゃんの誕生日、同じだし。確かにちょっと似てるとこはあるかもしれないけど、まさか実は双子でしたとでも言いたい?」

「………」
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