狂想曲
奏ちゃんは吐き出すように絞り出した。

だけど、キョウはそれを聞いても眉ひとつ動かさない。



「そうやって奏はいつも誰かや何かの所為にして、悲劇のヒーローを気取って。自己陶酔に浸ってるんだからいいよなぁ?」

「何だと?」

「だってそうだろ。キョウが悪い、川瀬が悪い、父さんが悪い、って。だから自分は正当だとでも言いたいつもり?」

「なっ」

「奏のしたこと、俺が知らないとでも思ってる?」


意味深に言って、キョウは口角を上げる。

奏ちゃんは途端に目を泳がせた。


キョウはそれを見て「あははっ」と声を立てて笑い、私の頭をひと撫でして、



「奏はな、親父を――“憎むべき川瀬”を、刺したんだよ」

「……え?」

「だから親父は、奏に、殺されたんだ」


ひっ、と喉が鳴った。

私は顔を引き攣らせる。


キョウはそんな私の肩を引き寄せた。



「人殺しの奏は、なのにそれを隠して“愛しい妹”とふたりで暮らして。気持ち悪いよなぁ、律」


キョウは目を細め、私から奏ちゃんへと視線を移す。



「なぁ、奏。今までどんな気持ちだったか教えてよ」

「やめろ」

「律のこと考えて想像で抜くのってどんな気分? どの客が律の代わりだった? いっぱいヤッたからわかんない? でもそうやって、気付いたらナンバーワンになってたもんなぁ?」

「やめろよ」

「誕生日の時のイベント、すごかったらしいじゃん。俺は律といたから知らないけど。あの日は最高だったなぁ」

「やめろって」

「そうだ。教えてやろうか? 律がどうやったら感じるか」

「やめろって言ってんだろうが!」
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